高校生の探究と進路のAIガイド

先生向け資料 手順とテンプレ

探究のルーブリックを3観点×3段階で作る手順と配布用ひな形

1単元で評価する探究の過程を1つに絞ると、3観点×3段階の表は9マスになります。2つに絞っても18マスです。評価規準を書くところから生徒の自己評価欄を付けるところまで、6つの手順で1単元分を作ります。

BRIEF この記事で終わること

担当する1単元分の探究ルーブリックが、評価規準と3段階の記述語まで書き上がっている状態。

記事の型 手順とテンプレ
所要時間 2日に分けて計90分
必要なもの 学習指導要領解説 総合的な探究の時間編、AIチャット1つ、過去の成果物の見本3点、筆記用具
手元に残るもの 1単元分の評価規準と記述語、生徒の自己評価欄まで埋まった作成シート
配布素材 探究ルーブリック作成シート 3観点×3段階
参照した資料 6件(記事末に一覧)

総合的な探究の時間のルーブリックは、1単元で評価する探究の過程を1〜2つに絞り、3観点×3段階の表にまとめれば今週中に形にできます。下の手順は6つです。学習指導要領の目標の文言から評価規準を書き起こし、AIで記述語の下書きを作り、見本の成果物で採点を合わせます。記事の途中に、記入例つきの作成シートを置いています。

評価規準の元になる公的資料を3点そろえる

中央教育審議会の平成28年12月の答申には、探究のプロセスのうち「整理・分析」「まとめ・表現」への取組が十分ではないという課題が書かれています。ルーブリックを作るときも、記述は課題の設定と情報の収集に寄りがちです。後半の過程を意識しながら、次の3点を手元に置きます。

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」は平成30年7月の発行です。目標と探究の過程を説明しています。
  • 国立教育政策研究所の「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」には高等学校の総合的な探究の時間編があり、令和3年8月に公表されました。評価規準の作り方を扱っています。
  • 文部科学省「今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開」高等学校編は、令和5年3月の発行です。

解説総合的な探究の時間編は、この時間を教科のように数値で評価しない立場をとっています。ルーブリックの段階は、指導と記録の手がかりとして設計します。 段階を校内の資料でどう扱うかは、各校の評価計画を確認してから決めます。

手順1 評価する過程と観点を単元ごとに絞る

学習指導要領解説では、探究の過程を課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現の4つに分けています。4つすべてを3観点で評価すると、規準は12個、3段階の記述語は36マスに膨らみます。1単元で1〜2過程に絞ると9〜18マスに収まり、1回の会議で検討しきれる量になります。年間で4過程を一巡させる配置の例は次のとおりです。

時期の例評価する過程見取る成果物の例
1学期前半課題の設定問いの変遷を書いたワークシート
1学期後半情報の収集調査計画と出典リスト
2学期整理・分析比較表や分類図、考察メモ
3学期まとめ・表現発表スライドと振り返りシート

解説によると、探究の過程は順番が前後したり、1つの活動の中で複数の過程が同時に進んだりすることもあります。表の配置は目安にとどめ、生徒の進み具合に合わせて評価の時期をずらします。

手順2 目標の文言から評価規準を1観点1文で書く

評価規準は、学習指導要領の目標の文言を単元の言葉に置き換えて作ります。思考・判断・表現に対応する目標(2)の原文は次のとおりです。

実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする。

引用文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」平成30年3月第4章 総合的な探究の時間 第1 目標(2)

目標の(1)を知識・技能に、(2)を思考・判断・表現に、(3)を主体的に学習に取り組む態度に対応させます。文末を「〜している」でそろえておくと、授業中に見取れる行動の形で書けます。整理・分析の単元なら、思考・判断・表現の規準は「集めた情報を比較や分類で整理し、問いへの考えを根拠とともに書いている」となります。比較する、分類する、関連付けるといった「考えるための技法」の語を入れておくと、見取る場面がはっきりします。

手順3 B基準を先に書き、AとCを差分で書く

観点別評価では、A「十分満足できる」、B「おおむね満足できる」、C「努力を要する」という3段階の呼び方が使われています。最初にBを書き、手順2の規準を成果物の上で確かめられる形にします。AはBに1つ要素を足した姿として書きます。Cには、Bに届くために次の授業で出す支援を書きます。そうすると評価が指導に戻ります。

記述語には、見取る証拠の名前を入れます。「深く考えている」のように程度だけを表す語は、採点者によって読み方が割れます。「比較表に3つ以上の観点がある」「出典を2つ以上の発行元から集めている」のように、ワークシートやスライドの上で数えられる語に言い換えます。1マスの記述語を1文に収めると、生徒が最後まで読める表になります。

手順4 AIで記述語の下書きを作り、学年団の言葉に直す

記述語のたたき台は、生成AIに頼むと短い時間でそろいます。入力するのは単元名と評価規準までにし、生徒の氏名や成果物の本文は入れません。次のプロンプトは、手順2の規準を貼り付ければそのまま使えます。

AIに聞く〔 〕を自分の内容に置き換えて使います
あなたは高校の総合的な探究の時間の評価規準づくりを手伝います。
次の単元と評価規準をもとに、3段階のルーブリックの記述語を表で作ってください。

単元名:【ここに単元名】
評価する探究の過程:【例:整理・分析】
観点ごとの評価規準:
・知識・技能:【規準を1文で】
・思考・判断・表現:【規準を1文で】
・主体的に学習に取り組む態度:【規準を1文で】
見取る成果物:【例:比較表、考察メモ】

条件:
・段階はA(十分満足できる)、B(おおむね満足できる)、C(努力を要する)の3つ
・Bを先に書き、AはBに1要素を足した姿、CはBに届くための支援を書く
・各マスは1文で、成果物の上で確かめられる語を使う
・「深く」「積極的に」など程度だけを表す語は使わない

AIの出力はそのまま配らず、次の3点で直します。

  1. 各マスの語を手順1で決めた成果物の上で確かめられるか読み直し、確かめられない語は数えられる語に書き換えます。
  2. AとBを横に並べ、差が1要素になっているかを比べます。2つ以上の要素が足されていれば、1つに減らします。
  3. 学年団で使っている言葉や、生徒が授業で聞いている用語に置き換えます。AIの言い回しが残っていると、生徒は読んでも何をすればよいか分かりにくくなります。
校務でAIを使う前の確認

文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0」は令和6年12月26日の公表で、教職員の校務での活用も扱っています。入力できる情報の範囲や使えるサービスは、所属する自治体や学校の規定を確認してから決めます。

手順5 見本の成果物3点で採点を合わせる

表ができたら、担当の教員がそれぞれ同じ見本3点を採点します。見本は、Aに近いもの、Bに近いもの、判断に迷うものを1点ずつ選ぶと、記述語の弱い所が見つかりやすくなります。過去の成果物を使う場合は、氏名を消し、校内の扱いに沿って用意します。

採点が割れたマスは、記述語の読み方が教員によって違っている所です。割れた理由を1行でメモし、その場で記述語を書き直します。それでも一致しないマスが残れば、表に印を付け、次の単元までに見直す項目として残します。

採点合わせの時間が取れません。1人で作っても使えますか。
読者
1人で作る場合は、見本3点を日を空けて2回採点する方法があります。1回目と2回目で段階が変わったマスが、書き直しの候補です。
タネ

手順6 課題を出す前に生徒へ配り、自己評価欄を付ける

ルーブリックを課題と同時に配ると、Bに届くまでに何をすればよいかを生徒が自分で確かめられます。作成シートのステップ5には、生徒が自分の成果物を見て段階に印を付け、根拠を1行書く欄を設けました。教員の評価と生徒の自己評価がずれたマスは、面談や振り返りの話題として使えます。

先に見せると、表に合わせただけの作品が増えませんか。
読者
そうした作品を減らしたい場合は、Aの記述語に「調べる中で問いを書き直している」のような、手順をなぞるだけでは届かない要素を入れる選択肢があります。
タネ

探究ルーブリック作成シート 3観点×3段階

tankyu-rubric-sakusei-sheet.mdMarkdown5ステップ・記入欄50以上・記入例1

今週は1単元分のステップ1と2を埋める

今週は、次の学期に扱う単元を1つ選び、作成シートのステップ1と2を埋めるところまで進めます。評価規準の3文がそろえば、手順4のプロンプトに貼り付けて記述語の下書きを作れます。採点合わせに使う見本3点を誰が用意するかは、次の学年会までに決めておきます。

よくある質問

総合的な探究の時間のルーブリックで点数を付けてもよいですか。

学習指導要領解説 総合的な探究の時間編は、この時間を教科のように数値で評価しない立場をとっています。段階を校内の資料でどう扱うかは、各校の評価計画を確認して決めます。

探究のルーブリックは何段階で作ることが多いですか。

観点別評価では、A「十分満足できる」、B「おおむね満足できる」、C「努力を要する」の3段階の呼び方が使われています。この記事の作成シートも、この3段階で組んでいます。

LIMITS この手順で解けないこと

  • 段階を校内の成績資料にどう換算するかは、各校の評価計画で決める必要があります。
  • 生徒一人ひとりの成果物に付ける所見の文章は、この手順では作りません。
  • 生成AIを校務で使ってよいかは、所属する自治体や学校の規定で確認する必要があります。

できることだけを並べても判断は早くなりません。扱えない範囲を先に出しています。

References

参照した資料

資料 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」 (平成30年7月。探究の過程の4段階、過程の順番が前後し得ること、数値で評価しない立場を参照)

資料 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」 (平成30年3月告示。第4章 総合的な探究の時間 第1 目標(1)〜(3)を参照)

資料 国立教育政策研究所「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」高等学校 総合的な探究の時間 (令和3年8月公表。同研究所の令和3年8月20日付事務連絡で公表と掲載先が案内されている)

資料 広島県 公開資料「総合的な学習の時間・総合的な探究の時間」 (中央教育審議会答申(平成28年12月)のうち、「整理・分析」「まとめ・表現」への取組が十分ではないという課題を引用した箇所を参照)

資料 文部科学省「今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開」高等学校編 (令和5年3月発行)

資料 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0」 (令和6年12月26日公表。教職員の校務での活用を扱う部分)

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